まえがき
2023.3.18.
「back number in your humor tour 2023」が始まった。
全5都市9公演のでっかいツアーである。
そのツアーの初日、京セラドーム公演DAY1に行ってきました。
私が京セラに行くのは5年ぶり。
同じくback number の
「dome tour 2018 “stay with you” 」以来である。
全曲を触れたいくらいに素晴らしかったのですが、とある1曲に絞って感想にしたいと思います。
以下、ライブのネタバレを含みます。
また、back number。というより依与吏さんへのネガ意見も述べています。
気にされない方だけお進みください。
ライブ感想
本当にどれも素晴らしかった。
開幕『アイラブユー』で「そうそう、これこれ。これがback numberよ」と染み入ってる余韻の最中、「はい、こんなんもありますよー」とばかりに飛んできた『大不正解』で脳が灼けたし。
『秘密のキス』,『クリスマスソング』,『ハッピーエンド』のバラードブロックは、しんどそうに歌う依与吏さんを見てこっちもしんどくなる。
早めの登場の『青い春』あたりのダンサブルロックニチアサステージは音と映像で酔ってたし、『Silent Journey in Tokyo』~『高嶺の花子さん』は情緒グチャグチャになる。どんな感情で「👏 👏👏 🙌」やればいいんだよ。
アリーナ後方のステージで披露した『手紙(acoustic)』なんて、もはや凶器だよ。周りの鼻すする音が桁違いに多かった。俺もそうだけど。
いつぞやぶりの『スーパースターになったら』の落ちサビ大合唱も楽しかった。周りに全然男性いなかったので気後れしてましたけど、関係ないくらいに声出てた。
アンコールもセトリの意図が分かんないけど、「強い曲並べれば強いでしょ!」って感じの楽しい・優しい・激しいの三拍子揃ってる。『怪盗』おわりなんて予想できる人いる?
MCで依与吏さんも仰られていましたが「ドームツアー」ということで、誰かに連れて来られたり、引きずり回されたり。キャパが大きくなるに伴って、back numberを知らない人も必然的に増えていたはず。
セトリが”新規アルバム+シングル曲”ばかりなのも、そういった初見さんへの配慮なのかなーと思っています。
そんな完全無欠の高火力セトリにおいて、かなり印象に残っている曲があります。
それは本編18曲目。
『ベルベットの詩』。
M18.ベルベットの詩
「頑張れ」ってのは 呪いみたいなもんだからね
本編は全19曲。
いつも通りの『スーパースターになったら』で締めの構成。
実質的には本曲が今回ライブの締めの曲と言っても過言ではありません。
たぶん10パターン以上書いたけど、まったく納得できなくて。それで頭の回路もおかしくなってきた頃、最終的に普通の言葉というか、なんの奇もてらえないような歌詞が出始めて。これは恥ずかしいぞと思いつつ、むしろそれが心地いい状態というか、「ああ、これでいいんじゃん」みたいな感じになったんです。バンドを始めた頃に戻ってきたような感覚でもありました。
いつの間にか「普通に考える」ということができなくなってしまったなって。ベタであることとか、ある種の初心みたいなものを失っていたと思っていて。そういう、自分たちが「普通に考えたらこれでいいじゃないか」と思うことを素直にやれる強さは、それこそツアー中に「ベルベットの詩」を書いたあたりから感じるようになりましたね。
<インタビュー>back numberが辿り着いた新境地、清水依与吏が新作『ユーモア』を語る【MONTHLY FEATURE】 | Special | Billboard JAPAN (billboard-japan.com)
作詞に苦戦したエピソードを持つ、この楽曲。
悲壮感を感じるサウンドに、自分を見失いそうになった灰色の世界を憂う歌詞。
インタビューの通り、back numberのシンプルな強さ。
歌詞がストレートにぶっ刺さる楽曲です。
本曲前のMCで、依与吏さんはこんなことを仰っています。
「頑張れ」「頑張れ」が積み重なって、今日もなんとか頑張って家に帰ってビールを開けて。それで報われればいいけど。 「頑張れ」ばっかじゃ、しんどいでしょ? 「頑張ったね」って言ってほしいじゃん。 だから俺は返しに行きたい。 みんなに「頑張ったね」って言ってあげたい。 (意訳) -依与吏さんMC-
実は私、依与吏さんのシリアスMCがあまり好きじゃなかったんです。
そう感じ始めたのは「NO MAGICツアー」くらいから。
涙流すほど感動してる人がいるのも見てるし、刺さる人には刺さってるのは知ってる。
ただ、あえて言葉を選ばず言うなら、
「いいこと言おうとしてる」風に見えてしまうんです。
言い直したり噛んだりしながら中々進まない話に、結局何が言いたんだろう?
いいこと言おうとして、綺麗な言葉を並べたがってない?
本当に失礼ながら、そう思っていました。
『水平線』が終わり、始まったMCパート。
話し出した瞬間に
「あっ…いつもの始まったよ」と。
凪のように気持ちが静まったことを覚えています。
眉間にしわを寄せながら言の葉を紡いでいく依与吏さん。
いつも通り行ったり来たりしながら、スムーズとはいえないMCを繰り広げていました。
そんな冷めた気持ちでMCを聴いていたのですが、涙で瞳を潤ませながら語った上述の言葉。
「頑張ったね」を伝えたい。
冷めたと思っていた胸の奥底が沸き立ち、目頭が熱くなるのを感じました。
コロナ禍で私の生活は激変しました。
自分なりに頑張ったという自覚はあるし、もう少し頑張れたかもという後悔もある。
思い出すたびに自己嫌悪に陥るんだから、いまだに区切りの付いてない自分がいる。
そんな不安を感じながら、将来についてもがいている最中です。
そんな私に対して、「頑張ったね」と。
そう伝えたいと言ってくれたんです。
素直にすごい嬉しかったし、肩の荷が下りた気がしたんですよね。
そこから始まる『ベルベットの詩』。
なぜ、依与吏さんが苦しそうに言葉を紡ぐのか。
なぜ、私がMCに嫌悪感を抱くのか。
本ライブの『ベルベットの詩』を聴いてみて、少し分かった気がしました。
水平線の向こう側へ
コロナ禍のback numberを牽引したのは
『水平線』だと思っています。
知名度的にもライブでの扱いを見ても。
変わる事を余儀なくされたコロナ禍。
多くの人は”我慢”を強いられていたと思います。
誰もが人知れず「頑張る」を重ねてるはずなのに、それが当然になって「頑張ったね」が聴こえない世界になってた。そもそも、そんな余裕のある人が少数なのかもしれん。
『水平線』はその事実に気づかせてくれる楽曲。
みんなそれぞれの「頑張っている」に気づかされる曲だからこそ、多くの人の共感を呼び、back numberの新たな代表曲になれたと思っています。
そんな水平線ですが、本ライブでは新たなMVを引っさげて17曲目での披露。
『ベルベットの詩』の前に配置されています。
コロナ禍にもかすかに光が差しだしたこのタイミング。
back numberが私たちに伝えたい
メッセージの変化だと思っています。
青くさい
なんて青くさい
綺麗ごとだって言われても
いいんだ 夢見る空は
いつだって青一色でいい
依与吏さんはこの曲で「夢」を語ってる。
青くさいって笑われそうな、
青一色の青空を頭の中に描いてる。
あるがままで生きられる世界を作りたいって思ってる。
依与吏さんがたどたどしく言葉を紡ぐのは、作詞者として言葉の重みを。
ボタンの掛け違いで、
与えるメッセージが変わる事を知っているから。
「NO MAGIC」ツアーのMCで
「俺たちにできるのはスピーカーの手前まで。そこから耳に入ってしまった音は、もう俺たちのものじゃない。」
的な事を話していました。
だから何十パターンも歌詞を作るし、無精ひげ生やしながらレコーディングに臨んでる。
スピーカーの手前で出来ることは、すべてやろうとしてる。
その依与吏さんの苦悩がリアルタイムで垣間見れるのが、私が嫌ってるシリアスMCなのだろうと思います。
理不尽が多すぎて
いつの間にかそれに慣れて
僕は自由だと
もう忘れてしまいそう
私が依与吏さんのシリアスMCを嫌悪するのは、私が忘れた側の人間だから。
理不尽に慣れきった人間だから、依与吏さんの言葉が青くさく聞こえるし、綺麗ごとに聞こえる。
自由なはずの自分に楔を打っているのは、自分だと気づかされる。
だから、こんなにも嫌悪感を抱く。
そう思いました。
私がback numberを好いている根本の理由はこれだと思っています。
光ある所に影があるように。
希望の近くに潜んでる、”不安”やら”後悔”の生々しさ。
その描写が上手いし、痛いほど共感できる。
誰にも見えないはずの私の心を、見透かすかのように音楽にしてる。
影の表現に特化したアーティスト。
それが「back number」だと思ってるし、私が応援する理由。
そんな影を描いた本曲・本ライブで、忘れられないシーンがありました。
MCので依与吏さんに「歌ってほしい」と要望された、曲終盤の「ラ~ラララ~」の大合唱。
久方ぶりのライブでの声出し。
花粉症で喉やられてるし、そもそもキーが高い。
私自身、お世辞にも綺麗に歌えた実感はありません。
それでも精いっぱいの大声で歌いきった。
そんな息も絶え絶えの私の耳に飛び込んだのが、このフレーズ。
音がさ 外れても
たとえ口塞がれても
僕は僕だと
自分の声で歌おう代わりはいないと
自分の声で歌おう
もうボロボロ泣いてた。
やっぱ、この人達は俺の心が見えてる。
合唱するなんて幼稚園児でもできることに、躊躇いや不安を覚えてる自己肯定感低めの私に
「音が外れようと、何しようと。
君は君のままでいいんだよ」
『「頑張った」と思うんだったら、
「頑張ったね」でいいんだよ』
そう言ってくれるんです。
back numberを「影を表現することに特化した」なんて書きましたが、ライブ終わりに思うのはいつも希望なんです。
影が色濃くなるということは、光が輝きを増しているということ。
丁寧に不安を浮き彫りにさせられた後に、スピーカーから出づる光に照らされて心が充たされる。
「影を際立たせる」ことで、
「光をより輝かせる」。
やっぱ、back numberって最高ですね。
あとがき
タイトルにもなっている
「humor(ユーモア)」という言葉。
定義付けの難しい言葉で、
類義語に「エスプリ」や「ウィット」。
対義語に「風刺」が挙げられます。
「humor」の特徴を一つ挙げるとすれば、
不完全な人間を、そのまま肯定するような態度
出発点に人間への愛情がある
ユーモア – Wikipedia
になります。
みなさんもユーモアのある言葉を言った経験があるかと思いますが、たいがい自虐的な言い回しになってるんじゃないでしょうか。
ユーモアの根底は
「人は不完全」であり、ポンコツな所も愛しく思いたいという愛情から生まれた言葉です。
もうこれ以上捨てるものもなくなって
完璧な人間になれたならば
さて何をしよう
さて何をしようか
なんだろう 何もないやここには誰一人
『ミスターパーフェクト』back number
自分さえいないのに
私が不安や後悔に苛まされるのは、私がポンコツだから。
私が完璧超人になれば解決する悩みですが、それは最悪の解決策。
ゴールのないスゴロクやらされてるようなもん。
人間全員が完璧になったら、それはもうディストピアだよ。
俺は俺のままでいい。
あるがままのポンコツな姿ごと、好きでいたい。
不完全に苦しみながら、back numberで活力をもらう。
「不完全」という理想で生きていきたいと思います。
自己肯定感爆上がり系ロックバンド
「back number」。
この五大ドームツアーで、一人でも多くの人に「humor」を思い出させてくれる、素晴らしいツアーになることを願っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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