まえがき
私はAS曲をあまり知らない。
正確に言うと「ムビマス以降のCDシリーズ」についてほぼ知らない。
「HOTCHPOTCH FESTIV@L!! 2」の開催も決まったということで、予習も兼ねて初試聴のAS曲について振り返ってくシリーズを始めてみようと思う。
無理くりでも前を向かないと、そろそろ「10thツアー最高だったモンスター」に成り果てそうな気がするので。
AS曲についてはサブスク解禁曲が少ないのが現状ですが、時は令和である。
日本全国、津々浦々。
CD1枚55円で宅配レンタルできる時代。
地方民にとっては何とも有難い時代になったね~。
という訳で、記念すべき1曲目は「MASTER PRIMAL」シリーズより『LEMONADE』。
檸檬爆弾の威力、ご賞味あれ。
歌詞考察
LEMON
本曲は歌詞が短い。
せっかくなので全部に触れてみようと思う。
手榴弾のピンを抜くような顔で
わたしは齧る 悔しくて
皮は苦くて果汁は酸っぱい
今日も三振 辛酸なめた
弱虫 毛虫のテロリスト
まず、言いたいことは
「手榴弾のピンを抜くような顔で」
この掴みが強すぎるってこと。
マイラーズカップの馬柱を眺めながら耳半分で聴いてたんだけど、このフレーズでスマホにガン飛ばしたもんね。
洒落た『LEMONADE』お出しされるかと思ったら、いきなり「Grenade」とかいう駄洒落なげてくんの。世も末だね。
調べてみると手榴弾界隈では、手榴弾のことを「レモン」と呼んだりするらしい。
さらに調べてみると、
この「レモンを手榴弾に例えたストーリー」。
これは
梶井基次郎の「檸檬」をモチーフにしてんじゃないか
ということらしい。
丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう。
作中終盤のこのシーンですね。
ちなみにどういう状況だったかというと、
「売り物の本を棚から取り出して積み上げ、その頂点に檸檬を置いて書店を爆発させる」という妄想を主人公がするってなシーンです。
ここだけ聞くと、我らがミリオンライブ様も真っ青のトンチキコミュですね。まぁ、高校の教科書に載ってるくらいだから紛うことなき名作なのだろうけど。
パブリックドメインらしいので、下記サイトでも見られます。
割と短いお話ですので是非。
「檸檬」という物語で私が抱える憂鬱は、終始「得体の知れない不吉な塊」と表現されている。
『LEMONADE』の歌詞もそうだと、私は思う。
この曲って、何に悩んでるのか。
その内容については一切明言していない。
恋なのか、夢なのか、人間関係なのか、はたまたお昼ご飯のメニューなのか。
歌詞からは判断できない。
その”何か”は一切合切
「手榴弾のピンを抜くような顔で」
「皮は苦くて果汁は酸っぱい」
「レモンと思しきもの」に例えられている。
「明言されてない苦悩」を「隠喩の隠喩(レモンと思しきもの)」で表現してる訳です。
ここに限らず、以降もそうだ。
歌詞を見ると「レモネードを作る物語」なんだけど、実は「レモン」という単語は一度も使わずに「レモン」を描写していて、その「レモン」に「私の苦悩」を重ねてる。
それって「檸檬」という作品に感じるアンニュイさだな、と私は思う。
「何かうまくいってないけど、何がダメか分かんない」
「絶望的というほどではないが、希望的とは断じて違う」
全てが徒労に終わってしまいそうな虚無感。
チアソングでも、バラードでもない。
メロウでイエローでブルー。
それが『LEMONADE』って楽曲だなーと思う。
あと、このパートで語りたいのは言葉選びがいちいちオシャ。
「今日も三振 辛酸なめた」
「辛酸」なんてかなり強い言葉だと思うけど、妙に軽妙に聞こえてしまう。冒頭の「手榴弾」しかり、耳を素通りしない、二度聞きしたくなる言葉選びだと思う。
「弱虫 毛虫のテロリスト」
唐突に出てくる「弱虫 毛虫」は、「手榴弾のピンを抜くような」=「苦虫を噛み潰した」と絡めたものですかね。
序盤の5行だけで、どれだけの言葉遊びが詰まってるのだろうか。
砂糖をください
一匙の砂糖
苦くて酸っぱいばかりの日々を
レモネードに変えたい、変えたい
ってなことを言ってたら、ここは割とストレートな歌詞だね。
現状からの脱却(レモン→レモネード)を望んでいることが伺えるパートです。
LEMONADE
カリフォルニアの太陽が
3つで200円
私は絞る 悲しくて
濡れた指先はとっても好い匂い
明日はどっちだ
タッチはあだち
涙で洗うポストハーベスト
2024年4月現在、レモン1個の価格は税込み91円 (shop-pro.jp)。
「3つで200円」とするなら「安売り」ということである。
「わたしの悩みなんて他の人からしたら二束三文のちんちくりん。わたし、割り切れないですぅ」
こんなことを思ってるかは知らんが、こんな歌詞でしょう。
ここでも「カリフォルニアの太陽(=レモン)」が出てくるけど、このギャップもいいよね。「カリフォルニアの太陽」なんていかにも陽気な字面で、陰気な聞かせ方してくるんだ。陽キャだと思ったら陰キャなんだぜ。タチ悪いだろ。
「濡れた指先はとっても好い匂い
明日はどっちだ」
このパートで気にかかるのは「好い匂い」。
「良い」と意味は同じだけど、「好い」を使ってるってことは“より主観的”であることを強調してる。
3個で200円の安っぽい匂いを、“わたし”は好いてる
そう言うてる訳です。
書いてて思うけど、わたしって地味に我が強い。
苦くて酸っぱいばかりの日々を、手榴弾のピンを抜くような顔しながらも齧ってる。
安く思われてる純情を、愛おしいと思ってる。
「砂糖をください」なんて弱音は吐けど、飲み干そうという度量がある。
穴掘って現実逃避しそうなもんなのに、一向にその気配がない。
それは、この曲が「LEMON(不安)」の唄じゃないからだ。
「LEMONADEにして飲み干してやろう」という気炎の唄だからだ。
苦くて酸っぱいばかりの日々を、出来損ないと捉えるか、スパイスと捉えるか。
わたしの匙加減で、その酸いと甘いの比率は変わる。非常に不安定だ。
だからこそ「明日はどっちだ」という歌詞につながってる。
溶ける氷を眺めてるだけ
ヌルくてウっスい日々にさよなら
レモネードおかわりしましょう
直後に歌われる「ヌルくてウっスい日々」とか最高にそうよね。
わりと綺麗にまとまった歌詞の中で、唯一と言っていいくらいに汚い印象がある。
余裕ぶってる主人公が放つ「本音」っぽい聞こえ方だと思う。
レモネード、レモネード
これメロウでイエローで冷たい
レモネード、レモネード、、、
これメロウでイエローで冷たいサワーレモネードおかわり
レモネードおかわりくださいレモネード、レモネード、、
これメロウでイエローで冷たい
レモネード レモネード、、、
これメロウでイエローで冷たいサワー
んで、怒涛の「レモネードおかわりモンスター」が生まれるってわけ。ストレスたまってんやろね。
まぁ、この曲の解釈をまとめると
レモンに齧りつけない人間に、レモネードの美味しさは分かんねぇよ
みたいな歌詞だと思ってます。
あとがき
―湧き上がる思いを掬い上げては
砂糖漬けにして また飲み込むの―
どっかのイキリ金魚も似たようなこと歌ってたが、アイドルにとって不変的な価値観なんだろうと思う。
だれが歌ってもいいと思うけど、願わくば我が担当にでもカバーしていただきたい楽曲だね。
酸いも甘いもアルコールで飲み干す、大人の女性だから。
そん時は配信のコメ欄に「レモンサワー」とか書かれそうな気がしないでもないけど。
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