まえがき
「何でもない日万歳!!」
ディズニー映画『ふしぎの国のアリス』では、何でもない日を祝してお茶会を開くシーンがあります。
「unbirthday」と言ったりするみたい。
幼い頃は「なんかバカなことしてんなー」くらいに思っていました。
ただ、大人になって、毎日に変化が無くなっていくにつれて。
取るに足らない日常を祝えることも、大事なことだと感じます。
そんな「誕生日」ですが、
「MILLION THEATER SEASON」
シーズン3「LOVERS HEART」。
そのトリを飾る、このバースデイソング。
インパクトと言う点では見劣りするかもしれませんが、他の全体曲に勝るとも劣らない。
非常に素晴らしい楽曲です。
それでは、考察にまいりましょう。
考察の前に
作詞の辻氏は
『ダイヤモンド・クラリティ』,
『My Evolution』
などの作詞をされています。
作詞曲の数がおびただしいです。
アイマス問わず活躍されている方ということですね。
作曲の藤原氏は
『Walking on the Square』に、作曲として携わっています。
プロフィール欄を覗くと、
「天体物理学の分野で研究」
「JAXAでの勤務経験」
という音楽家らしからぬ文言が並びます。
まさに”マルチ”に活動されています。
まあ、自分で作詞作曲して自分で歌う、MIDI検定1級の学会表彰されるMENSA会員がいるコンテンツなので多様性の一部です。
そんなわけで!
— 小岩井ことり (@koiwai_kotori) April 3, 2019
全人口の上位2%のIQだとテストで認められると入ることの出来る
「MENSA(メンサ)」に合格しました!
わーい!わーい!
頭の運動って感じで
テストおもしろかったです!
本日は、21:00~ ラジユニ生放送!
明日は、22:00~ たかはし智秋さんのLLC生放送です!みてね✨#MENSA pic.twitter.com/KZAjLex24M
言うて、僕もFANZA会員だからね。
似た者同士やいね。
この2人の組み合わせで言うと、円盤が発売されたばかりの8thライブの本編ラスト。
『ショコラブル*イブ』があります。
チョコのように甘くかわいらしいサウンドと歌詞が特徴的な楽曲です。
最近は歌詞を全部載せて考察することは、意図的に避けていました。
歌詞を引用せずに、伝えたいことをまとめる練習として。
ただ、本曲に関しては全て載せます。
理由は単純。
歌詞と言うより、歌”詩”。
全編を通して、一つの物語となっているため。
たった700文字で構成された、この淡く切ないラブソングを切り取ること。
それは、装丁された洒落た文庫本を、YouTube見ながら速読するような、無粋な行為だと思います。
個人的にはずっと眺めていられるくらいに、素敵な歌詞だなと思っています。
#ミリオンライブ歌詞が天才選手権Part2
があれば、満を持して全文呟く所存。
Twitterの文字数も増えるらしいし。
なるべく簡潔にはまとめますが、それでもいつもより長いです。
まあ、こんな記事見に来たくらいなんで時間が余ってるんでしょう。
最後までお付き合いいただけると、嬉しいです。
歌詞考察
タイトル
順番が前後しますが、先に「Birthday Card」の方から。
初めて本曲を聞いた時から、思っていた疑問があります。
「なぜ、バースデイカードなんだろう?」と。
後々出てきますが、君の誕生日に気がつく所からこの曲は始まります。
そのために曲名にバースデイ要素を入れたというのは、そのとおりだと思います。
ただ、それならクリスマスでも、バレンタインでも良かったはず。
恋人が相手を想うイベントなんて、腐るほどあるでしょう。爆発しろ。
わざに万人に用意されている”誕生日”を選ぶのは、ラブソングとして考えると少し弱い気がします。
日本では馴染めは薄いですが、アメリカでは誕生日にバースデイカードを贈るのは、とてもポピュラーな文化だそう。
誰かに想いを届けるシンボル。
作詞の辻氏的には、
それが「Birthday Card」だったのかもしれません。
だから、時と場合によっては
『空色♡ フロッピーディスク』とか、
『空色♡ 大絵巻物』とか、
『空色♡ ロゼッタ・ストーン』の可能性があったかもしれないということです。
それはそれで面白そうではある。
もう少しエモい解釈をするなら、
誕生日は”誕生を祝う日”。
本曲は終始、私から君への感謝の気持ちが述べられています。
後述しますが、本曲は別れの歌。
別れてなお残る、感謝の気持ちを歌う曲。
別れたから生まれた、淡い恋慕に馳せる。
「出会ってくれて ありがとう」の気持ちと受け取る事も出来ます。
続いて「空色」。
「空」は様々な役割を持ち合わせています。
夢を描くキャンバスだったり。
羽ばたきたくなる自由の象徴であったり。
刻一刻と移り変わる空模様のように、そこに載せるイメージも多種多様です。
本曲においては
2人をつなぐ、唯一のツール
として描かれています。
同じような使われ方としては、ここらへんがが近しいかと思います。
たとえ違うドアを ノックしていても
『Get My Shinin’』舞浜歩
空はいつも つながってる
真っ直ぐ見つめた空の向こう
『ココロがかえる場所』
繋がる景色で生きている
世界中が誰かの優しい場所
どこに行っても変わらずあり続ける空。
空だけは同じような景色を共有できます。
物理的に離れた主人公の想いの置き所。
それが「空」なのかなと思います。
なので合わせると、
きっと、君につながっているであろう空ごしに、出会いの感謝を伝えるよ
的な曲名だと思っています。
もしくは「空色」となっている事から、「空」をバカでかい「Birthday Card」と考え、『空色 Birthday Card』とも解釈できます。
それなら、「青色」とか「淡色」にならなかったのも納得です。
先に述べた通り、空に定型の色や形なんて存在しないからです。
1番 A・Bメロ
イントロからギターの切ない音色が響きます。
この時点で切ない曲であることを直感します。
ハート3曲が明るいイントロが多かったので、この時点でギャップにやられたことを覚えています。
大丈夫だ、って もう平気だ、って
ずっと言い聞かせていたのに
なんて不意打ち めくるカレンダー
そうだ…忘れていた 赤い◎(にじゅうまる)
(ふわ 空に溶ける)
Happy Birthday
(Far 遥かきみへ)
おめでとう
個人的に似たような失恋エピソードがある、という話はさておいて。
いきなり
「大丈夫だ、って もう平気だ、って
ずっと言い聞かせていたのに」
から始まるんですよ。
もうね……。
物語の導入として完璧。
「え、何々。どしたん。」
って、なるじゃん。
思わず聞き入りたくなるじゃん。
そんなロコが豆鉄砲食らったみたいな衝撃的な1行目なんですけど、この主人公も私同様に面喰う事態に遭遇しています。
めくったカレンダーに、きみの誕生日を見つけたからです。
その衝撃度合いはMVの歌唱にも表れています。
「そうだ…忘れていた」
は杏奈パートですが、オフ杏奈並みのローテンションでの歌唱です。
歌うというより、漏れてる。
もしくは漏れてすらいない。
予期しないことに息を呑んでいる様な、そんな歌い方です。
失恋や喪失を経験した事がある人であれば、思い当たる節があるのではないでしょうか。
辛い事や苦悩に直面する時、人はそもそも触れない方向に舵を切ることがあります。
この主人公とて同様で、前述の「大丈夫だ~」部分から読み取れます。
大丈夫なら言い聞かす必要なんて皆無。
どうでもいいことなら、思い出すこと自体しないでしょう。
思えば思うほど、恋しいのが分かりきっている。
だから、意図的にきみを避けていた。
そんな主人公に予期せぬ所から湧いてきた”きみ”はとてつもない衝撃を与えます。
Aメロでは、きみに対して気持ちの整理がついていない。
少し未練がましい主人公の心情が、丁寧に描かれています。
さよならの未来には
それぞれの今日をみつけて
(願ってるよ)どうか笑顔でいてね
“友達”として
Aメロでは哀愁が漂っていましたが、その理由が明言されるのはここです。
さよならしていたからです。
Bメロは言葉だけ見れば前向きですが、離れた距離感を匂わす描写が続きます。
分かりやすいのは
「友達として」の部分。
倒置法と「” “」使ってまで、「友達」を強調します。
後々分かることではありますが、私ときみは恋仲であることが示唆されています。
わざわざ「友達」を強調するのも、先ほどと同じ理由。
未練があるから故の、彼女なりの強引な区切りの付け方でしょう。
かなり距離感を強調してきますが、メッセージとしてはむしろ逆。
「離れてはいるけど、大切に思っているよ」という、心の距離感の近さを感じさせるものです。
ここまで丁寧に主人公ときみの関係を間接的に描写することで、「笑顔でいてね」の言葉通りの愛情表現と、その裏に隠れている切なさ。
そのアンビバレントを表現できているんだろうと思います。
1番 サビ
好きでいてもいいかな ずっと
世界中のどこにいても
届くように 四角い窓の
景色を 切手にして
愛しい日々をありがとうね
きみに恋をしてよかった
もう大丈夫だよ
もう平気だよ
こころ(こころ)からの
空色 Birthday Card
届け きみへと続く青
サビにきて、やっと直接的な表現。
「好き」,「恋」という単語が出てきます。
この主人公の心理描写だけ見ても、章ごとに話が明らかになっていく様な物語的な構成だと思います。
Bメロで強調されていた距離感の遠さは「世界中のどこにいても」。世界規模まで拡大しています。
めちゃくちゃ、くどいですね。
本曲において、
物理的な距離感が非常に重要な要素
であることの証明と言えます。
このパートで目を引く表現
「四角い窓の 景色を 切手にして」
も同様です。
インターネットの普及した現代ですが、遠くの地へ想いを載せる媒体として、「郵便」は今もあり続けています。
「郵便を送るために切手を貼る」という行為が当たり前であるように。
今から私は想いを届けるんです。
届けたいんです。
という意思表示が、「切手」に込められていると思います。
また、今までの歌詞と合わせて、即座に情景が思い浮かぶ。そんな歌詞だと思います。
ある日カレンダーをめくり、彼の誕生日を思い出す主人公。
一呼吸ついて、ふと窓の外を眺めると、あの頃と変わらない青空が広がっている。
「元気にしてるかな」
そんな優しさと切なさが混じる、あるアパートの一室。
絵が思い浮かぶ、詩的な歌詞だと思います。
サビについてはもう少し語りたいんですが、ラスサビに書きます。
2番 A・Bメロ
あとまわしにできない夢
恋を1番にできない夢だったから
不器用と言えば それだけのこと
キリトリ線に見えたっけ… 飛行機雲が
1番では“別れてしまった現状”を描いていました。
ここで話がまた一つ進みます。
“別れてしまった理由”です。
主人公に
「あとまわしにできない夢
恋を1番にできない夢」
があったから。
主人公がここまでうじうじしているのも納得です。
主人公都合での別れだったから、「まだ好きなの」なんて大っぴらに言えないという気持ちなのでしょう。
「好きでいてもいいかな」
なんて他人行儀な歌詞も、そんな我儘を自覚しているからの発言。
この後に続く、
「不器用と言えば それだけのこと」という歌詞は、そんな主人公の後悔を端的に表しています。
主人公自身、他にもやりようがあったと。
きみと一緒にいながら、恋を1番にできない夢を叶えることもできたと。
それができなかったのは、私が不器用だったからだと。
これを歌っているのが”アイドル”、というのも刺さるポイントです。
“アイドル”としての”強さ”も、”少女”としての”弱さ”も知るPから見て、この主人公に担当を重ねるのは当然。
“アイドル”として活躍する幸せ。
“1人の人間”としての幸せ。
Pとして考えさせられる歌詞だと思います。
ビックリするくらい切ないね。
考察しといて、なんだけど。
私が最も気に入っているフレーズも、このパートに入っています。
「キリトリ線に見えたっけ… 飛行機雲が」です。
冒頭述べたように、空は2人をつなぐ場所。
主人公的には心の拠り所とも言える場所です。
そんな空を横断する飛行機雲が、私ときみを裂く邪魔者に見えたと言う歌詞。
すごい素敵な歌詞じゃないですか。
そんな柔らかい表現ある?
初めて聞いた時の切なさ、半端なかったよ。
曲全体で見ても、ここが最も主人公が弱さを見せている部分だと思います。
ごめんねはもう言わない!
最後の約束だから
(見上げたら)ちゃんと笑顔でいよう
私らしく
あれだけ弱音吐いて、この歌詞。
健気すぎて、しんどい。
幾度となく謝ってきたんでしょうね。
別れる前も、別れた後も。
直接、間接問わず。
(願ってるよ)どうか笑顔でいてね
“友達”として
1番Bメロと比較すると、対比的な表現になっています。
願ってるよ → 見上げたら
笑顔でいてね → 笑顔でいよう
友達として → 私らしく
1番では対象が“きみ”でしたが、
2番では“私”に変わっています。
きみに対して、後ろめたさが先行していた故に、きみ主導の考えだった主人公。
そんな主人公が自分を肯定する。
少し前を向いた様な成長表現かと思います。
2番 サビ
生まれた日は泣いたってね
誕生日は何度も笑って
飛行機雲なんとなく今日は
優しい消印みたいいつかいつか ありがとうを
きみがきみで嬉しかったと
偶然に会えたら
話せるといいな
今は(今は)そっと
空色 Birthday Card(Far 空に溶ける)
(ふわ 遥かきみへ)
「生まれた日」と「誕生日」。
似ているようで違う言葉です。
「生まれた日」は
“生まれる”という行為があった日。
「誕生日」は
「生まれた日」を祝う日。
この曲に当てはめると、
「生まれた日」=2人が別れた時
「誕生日」=別れに想いを馳せる時
だと、しっくり来ます。
「生まれた日」=2人が出会った時としなかったのは、この歌が「別れの歌」だから。
別れてこそ際立つ愛を歌うから、その始まり“別れが生まれた日”を明確にする必要があるのかなと。
キリトリ線でしかなかった飛行機雲が、ここでは「優しい消印」に変わっています。
空はいつだって同じ。
ただ、そこにあるだけ。
空の見え方が変わるのであれば、それは見る側の気持ちが変わるということ。
主人公の君に対しての想いが、変化していることを示しています。
1番サビの「切手」から「消印」というフレーズの変化も同様。
「送る」前だった気持ちが、
「送った」に変わった。
自分の気持ちを空に載せきった。
主人公の中での、そんな変化が読み取れます。
ラスト
Happy Birthday どこかでひとつずつ
ローソク吹き消した願いが
叶いますように
そしてカレンダーをめくり
(明日へ)明日へ 空色 Message
「バースデーケーキに立てたロウソクを吹き消す」という慣習は万国共通です。
しかし、海外では「吹き消すと願い事が叶う」という意味合いがあるそうです。
「バースデイカード」の件しかり。
ピーンと来てない歌詞でしたが、そこから取ってそうです。
2番サビから主人公の気持ちが明確に変わっていますが、ここでもそれが表れています。
息を呑んだカレンダーの赤い◎。
そのカレンダーをめくります。
カレンダーをめくる行為は、
大げさに言うと現在を過去に変える行為。
もう終わったことだと、切り替える作業。
主人公が君の誕生日を過去のものと一区切りつけたことを、視覚的に表しています。
もはや、主人公にとってきみを思う事は、何ら特別なことではありません。
特別な日に贈る
「Birthday Card」ではなく、
ただの「Message」。
そう彼女は言います。
好きでいてもいいかな ずっと
世界中のどこにいても
届くように 四角い窓の
景色を 切手にして愛しい日々をありがとうね
きみに恋をしてよかった
もう大丈夫だよ もう平気だよ
こころ(こころ)からの
空色 Birthday Card
届け きみへと続く青
(ふわ 空に溶ける)Happy Birthday
(Far 遥かきみへ)
指先で「ありがとう」
打ち明けられずにいた想いを、再度歌います。
もがき苦しみ、それでも残った彼女のまごうことなき本音です。
心からのメッセージであると共に、
「心 空」。
心の内は、もう空っぽ。
言いたいことは、すべて空に吐き出しています。
ここまで、数多くの主人公の機微を考察してきました。
主人公の心情の変遷を、ひしひしと感じたと思います。
ただ、それはあくまで心の中の話。
第三者目線で言うと話は変わります。
主人公は何もしていない。
想いを届けるための行動は、他人からは一切見えていません。
それでも思いは必ず届くはず。
指先で「ありがとう」
この歌の最後の最後で。
やっと、想いを形にできたんだから。
あとがき
私には、この曲を聴いてみたいシチュエーションがあります。
今聴いても良い曲ですが、その状況で聴けば号泣必至。
いつも以上に刺さること、間違いなし。
絶対に訪れて欲しくないシチュエーションでもありますが……。
それは
「ミリオンライブが終わる時」です。
もし、私がミリPをやめる時が来るとすれば、やめざるを得ない事情ができた。
そんな状況かなと思っています。
この歌の主人公の様に。
出会った瞬間に、別れのカウントダウンは始まります。
その日がいつ来るかは分かりません。
冬の底冷えの様に忍び寄るものか、
めくったカレンダーの◎なのか。
大事なのは
いつか必ず来るということ。
そうなった時に一分の後悔もなく、プロデュースできたと言いたい。
心の底から
「愛しい日々をありがとう」
と言いたい。
私はそう思います。
この曲って、
“ヴィンテージ品”だと思うんです。
今日よりも明日の方が胸に響く。
そんな曲だなと。
この曲を聴くたびに、共に浮かぶ思い出が増えていばいいなと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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