まえがき
食欲の秋、スポーツの秋、忘れられない秋。
「○○の秋」ってよく聞く言葉ですが、「芸術の秋」だけはあまりなじみがありませんね。
美術館行ったのなんて、いつぞや「チームラボ」見るために豊洲行ったくらいでしょうか。
そんな芸術的センスの乏しい私ですが、ご安心ください。
今回は美術というより、国語と理科のお勉強です。
考察の前に
佐高氏ですが「≡君彩≡」以降、直近のミリオンライブに多く曲を制作されています。
元々は「y0c1e(ヨシエ)」名義でボカロPとして活動されていたようです。
紹介されている曲の中で言うと、ミリラジにて先行配信された『ゆえに…なんです』に、非常に衝撃を受けました。
あべりかさん(真壁瑞希役)の歌唱力は言うまでもありませんが、海の中を揺蕩うような、沈んでいくような。不思議な曲です。
素人目線で言うと、”オシャレな曲”が多い印象を受けます。
今回から「CLEVER_CLOVER」チームに突入しています。
「賢い白詰草の集団」です。
冒頭に秋の話をしましたが、トランプのクローバーは“春”を表す絵柄とされています。
春と言えば、”芽吹き”の季節。
新たな始まりに胸を高鳴らせ、希望に満ちる。そんな季節です。
「CLEVER_CLOVER」チームのトップバッターとして、こちらも期待に胸を膨らませてしまいます。
歌詞考察
電気クラゲは白い花の夢を見るか?
本曲以外で見たことのないステージですが、皆さんは何をイメージされましたか。
私は“深海”を連想してしまいました。
理由としては3つ。
1つ。
冒頭の歌詞に「海底」が含まれているため。
まぁ、安直ですね。
2つ。
4人の中心から拡がる照明が、水面に落ちる波紋を。周囲に漂う光の粒が、”マリンスノー”を想起させるためです。
詳しくは下記参照。
マリンスノーは動植物の死骸など、様々な有機・無機物で構成されています。
エネルギーの少ない深海において、表層から降りてくるそれらはまさに恵みの雨(海の中だけど)。後述する理由とも繋がってきます。
そして、3つ。
この曲のテーマとして
「生む/産む」が挙げられると思うためです。
地球最初の生命は、約38億年前に”海”で生まれたとされています。
「海は生命の母」と言われるように、今こうして生活している生物の源は海にあります。
本曲のコミュは「アート」に主眼を置いた内容になっています。
「アート」は「表現を生み出すこと」に特化した学問。
曲の雰囲気とコミュの内容に沿った、親和性の高いステージ演出だと思います。
長々と理由を述べてきましたが、このステージに“宇宙”を連想された方もいるでしょう。
水紋を惑星の公転軌道。
光の粒を宇宙に煌めく星々。
そう重ねても違和感はありません。
ラスサビの「巡航する星の速度」の歌詞とも繋がります。
“海”と”宇宙”という違いはありますが、その違いに意味はないと思っています。
どちらにも共通して言えることは、
“神秘的”で“壮大”。
「形容しがたい感動がある」ということ。
この「形容しがたい」が、本曲のキーワードだと思います。
「理解不能」という芸術
この曲ではアイドル達が“コンテンポラリーダンス”に挑戦しています。
特徴として挙げられるのは、
“型や形式が無い”ということ。
端的に言うと、同じテーマであっても“個人間でダンスが変わってしまう”という事です。
歌唱メンバーの海美はバレエ経験者であり、バレエには多くの型があります。
表現において型があるという事は、
“見ている第三者に対して伝えたいことが分かりやすい”
“集団の統率がしやすい”
というメリットがあります。
字面だけ見ると、型のあるダンスの方が複数人で踊るには適していると言えます。
話は変わって。
某ロックバンドのMVで、コンテンポラリーダンスを最近よく目にします。
その曲は喪失をテーマにしたであろうバラード。
少なく見積もっても数十回は見ていますが、何度見ても不可解で、十数人のダンサー達のまとまりなんて皆無です。
それでも見ていくうちに
「激しい怒りと悲しみ」
「どうにもならない虚無感」
そんなものを感じるようになってきました。
誰かが説明してくれたわけでもなく、ただ何となく。
この「理解できないけど理解できる」という感覚。
私が本曲のキーワードにした
「形容しがたい」に通ずる感覚だと思います。
“ステージ演出”と”ダンス”。
まったく異なる表現から生じる、共通の解釈。
それを念頭に置いて、さぁ本題。
“歌詞”を見ていきましょう。
「花」と「ダンス」と「芸術」と。
めざめた私が踊るとき
花いきれ満ちて草木芽ぐむ朝のなか
晴れた日の雨によく似た
産声という歌を祈りのように
切なる声で歌った
このサビの歌詞。
正直、何が言いたいのかはパッと見わからない。
四苦八苦しながら歌詞を見てたんですけど、ここで注目したのはこの言葉。
「花いきれ」です。
この単語自体は見つかりませんでしたが、これに近い言葉はありました。
それが「草いきれ/熱れ」。
夏の日差しによって、草むらの中が高温多湿になる現象を指します。
「直射日光+葉の蒸散作用」によってもたらされる、熱く湿った不愉快な状態。
夏の季語ともされています。
中学の理科でやりましたね。
葉の裏側にワセリンを塗って水が減るか減らないか、っつー問題。あれです。
植物が行う”蒸散”という行為は、人間で言う”新陳代謝”。
植物にとっても、必要不可欠な行為です。
咽せ返る生命のにおいと
『オー!リバル』ポルノグラフィティ
目を細めるほどの色彩
我は今 生きている My Life
太陽が顔を覗かせ、草木に陽の光が降り注ぎ。
目覚めたことを誇示するかのように、咽せ返るほどの呼気を発しだし、目を細めるほどの極彩色を輝かせる。
誰一人声を発さずとも、何故か伝わる生の躍動。
その姿こそが、植物にとっての生の証。
「熱れ」で「生きれ」
難解なサビではありますが、紐解いてみると「聴こえないはずの植物の産声」を表現しています。
その「聴こえないのに聴こえる」って感覚。
私が散々語ってきた、「形容しがたい」と同じ感覚だと思うんです。
ステージ演出
コンテンポラリーダンス
サビの歌詞
それぞれ異なる表現技法ではありますが、感じることは全部おなじ。
この三位一体。
「違う」されど「同じ」。
これが私の考える本曲の根幹です。
Reincarnation
それはイベント後の「エピローグコミュ」にも描かれています。
無事、公演も大成功。
打ち上げで4人が訪れたのは美術館。
そこで行われていた企画展示は、
『形而上学的にみる現代アートの今』。
「形而上学」とは、
物質的ではない、抽象的な存在そのものを扱う学問
形而上学とは?言葉の意味を簡単にわかりやすく解説!(形而上と形而下の違い) | みちくさスタディ (michikusa.biz)
「んで、結局なんなん?」
って、ぶん殴りたくなる説明。
だけど、この説明文って
「芸術」に置き換えても通じそうじゃないですか?
抽象的だから、その表現は様々。
「違っても同じ」かもしれないし、「同じだけど違う」かもしれない。
だから、哲学の一分野になるくらい難解だし、芸術って高尚な趣味になりがちなんだと思う。
最後になりますが、私が本曲に感じるメッセージ性は以下の通りです。
頭の中を形にするのは難しいし、その表現は様々。
「同じものでも違う表現」ができるし、その逆もまた然り。
だから、他人の創作物には価値がある。
「形容できない”コト”」を「形容できる”モノ”」に変換できるのは偉大な行為。
なにかを「生み出す」ってスゴイね。
いち”ヘッポコブロガー”として、よりよい文章表現に邁進したいと思ったでござ候。
あとがき
私も軽い理由で「歌詞考察ブログ」始めましたけど、「頭の中を文章にする」ってのは大変ですね。
辞書引いて、歌詞を反芻して、辞書引いて、分かりやすいように構成する。
やり出して分かったけど、この「出力」が難しいんよ。
歌詞に込められてるであろう”微妙なニュアンス”を、”適切な言葉”と”適切な表現”で伝える。
この作業に、いつも苦労してる。
あとで見返して全部書き直すとかザラにあるよ。
ミリオンライブ界隈にも様々な二次創作物があるけど、そのどれもに苦労があると思うと応援したくなるね。
いや~、しかし。
アタマ爆発しそうなくらい難解な歌詞でしたわ。
でも、その分やりごたえもあって楽しかtt…………
アタマツカウノハ、ホドホドニシトキマショウ。
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