『未完成のポラリス』歌詞考察

ミリオン
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まえがき

学生の頃、NHKで「テレパシー少女蘭」ってアニメがやってた。

内容は一つも覚えてないんだけど、律儀に見てた理由だけは覚えてる。

ED曲が好きだったからだ。
音速ラインの『ポラリスの涙』って言うんですけど。

 

「何故いきなり思い出話を?」と面くらってるかもしれませんが、

「ポラリス」と名の付く楽曲は名曲ぞろいだな

これが言いたいだけの前書きでした。

 

『未完成のポラリス』
作詞:グシミヤギヒデユキ
作曲:グシミヤギヒデユキ

 

歌詞考察

ポラリスとは?

語るにあたり、タイトルにもなっている「ポラリス」について軽く触れておきましょう。

ポラリスとは、こぐま座で最も明るい恒星「こぐま座α星」のことで現在の北極星である。

(中略)

北極星は方角では真北にあり、1年中動かないように見えるため、天測航法などによって地球上の現在位置を求める方位測定に用いられている。

引用:「ポラリス」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書

常に真北に望む不動の星。その特徴から

「指針、道標」

といった意味合いを持つようになった天体。

それがポラリスである。

 

桐谷さんも仰っているけど、本曲は作中ドラマの内容を強く感じさせる歌詞になっている。

三重連星になぞらえた「恋模様」。
綺麗事しか吐けぬ「Upper Dog」の遠吠え。
1等星に霞む「劣等生」。

パッと思いつく限りこれくらいの受け取り方ができる。様々な角度から楽しめるのは、本曲の大きな魅力でしょう。ぜひコミュと共に。

というわけで多彩な解釈の出来る本曲。

本記事においては、”楽曲単体”としての解釈を書いていこうと思う。

 

regret star

本曲は03:12(mora)と非常にコンパクト。しかしながら、展開はドラマティック。とりわけ歌詞はパートごとに役割分担がはっきりしている。まるでオムニバス形式のドラマのように。

短いながらも起伏に富んだ構成で、かなり満足感が高い。

歌詞も教えてもらったし、せっかくなので全文に触れてみようと思う。

 

いつかは君にとっての
何かになれるかな
両手を零れ落ちた願い

冒頭いきなり夢敗れた様子から始まる。まず、この導入がいい。フックとして完璧。

中でも「零れ落ちた」という歌詞が秀逸だ。

直前の「君にとっての何かになれるかな」が主人公の夢なんだけど、零れ落ちたというからには、”手中に収めたタイミング”があったはずなんだ。

掌に触れたのに、いまは無い。

その情念を人は「後悔」と呼ぶけれど、冒頭で描かれてるのはまさにそれだ。

全体を通じて奏でられるシリアスな旋律の起こり。起承転結の起は「主人公の後悔」から来てることが分かる。

 

夢の終わりが悲しくて
膝を抱えて泣いていた
時間だけが通り過ぎても
弱い私のままだった

君のことを見つめていた
その姿を羨んでいた
まるで私はエキストラのように
一人立ち尽くす

そんで、「スーパー懺悔タイム」が始まるってワケ。戦姫絶唱ミリオンライブ…始まったな……。

ひたすら物悲しいパートだけれど、ここでの「静動の対比」が、より悲哀を助長しているように思う。

「零れ落ちた」
「通り過ぎて」

は時間にかかるフレーズ。

だから当然、動的。

それに比べて主人公にかかるのは、

「膝を抱えて」
「~ままだった」
「見つめて(羨んで)いた」
「立ち尽くす」

非常に静的。

流れていく時間と、何もできない主人公。「疎外感」を強く感じさせる構図となっている。

そして、その構図の原因が「君のせいだ」と明言されるパートでもある。

 

綺麗な言葉は目を背けるための口実
取り繕ってばかりの自分が
誰よりも嫌いなんだ

眩しい青に震えた
私は臆病で
変わりたくて 一歩踏み出せなくて
君の瞳に映る日が来るまで
夜を待つポラリス

Bメロ~1番サビ。

前パートで描かれた主人公の悩みのタネである「君」の存在は、「眩しい青」に成り代わっている。

最初に言ったことと矛盾するけれど、本曲が「STARDOM ROAD THEATER」の一部である以上、どうしたって「スピカ(青白色)」が頭をよぎってしまう。

とすると、本曲の「ポラリス」ってすごく皮肉だね。

スピカ(一等星)に対して、ポラリス(二等星)

もう可哀想だからやめたげて。

まぁ、この「眩しい青」は誰でもよくて、要は「自分よりも輝いてる存在がいる」というのが重要だ。

 

一歩踏み出せない理由。
両手から零れ落ちたモノ。

それはどちらも同じだ。

仮に一歩踏み出して「眩しい青」と横並んだとして、そこに現れるのは厳然たる事実。

「どちらが輝いているか?」という背比べだ。

主人公なりにその答えは知ってる。実際どうかは別としてね。

綺麗な口実も、取り繕ってばかりの自分も。その答えを直視できない故の防衛本能。

青き星との邂逅がもたらした「ジシンの喪失」に他ならない。

 

Turning star

台本のない現実に
足が竦んでた私を
絶え間なく寄せては返す
感情の波が攫ってく

存在理由を探し続ける
それがただの偶然だって
群像劇に縋るのは
もうやめた

冷たい雨で滲んだ君への憧れは
胸の中でそっと眠りについて
何億光年の遥か彼方まで響け
このメロディ

ここから2番。

1番でも描かれていた「静動対比」が続くんだけど、ここの「感情の波が攫ってく」はその線引きをぶっ壊そうとするフレーズ。物語として非常に重要な変化のシーンだ。

実際、この直後に転調も入るしね。

「攫う」って「(気づかれずに)連れ去る」の意味だけど、この(気づかれずに)ってのがイイよね。後々出てくる「小さな炎」の伏線になってる。

 

そんでその後に出てくるのがコイツよ、コイツ。

「群像劇に縋るのは もうやめた」

やっとこさ出てきた本音。
取り繕わないノン綺麗言。
一足飛んで八艘飛びの発想。

ここまでいたいけな女の子を演じてきてた主人公に、私はまんまと騙されてたわけ。

一皮むいだら、そこには獣がいた。

 

この主人公は、本質あちら側の住人だ。

「順番待ちで主役になれる物語」になんてキョーミない。

『自分で掴み取る主役』に焦がれる、一介の狩人だ。

 

だとすると、妙なシンクロをしてた楽曲だなーと感じてしまう訳です。このために11年寝かせてたんだとしたら「どういう思想!?」って心のノブが突っ込むけども。

「一宮 真珠星」から主役の座を掴み取った、三船なる。

誰かの「主役」を眺めながら11年を過ごした、宮尾美也。

ちょっちょさんのブログも拝見したけど、気持ちが入るのも無理ない境遇だったとは思うんです。「最初で最後かもしれない」という言葉に、偽りは無いんだろうとも思った。

たまに「ユニット曲だけどソロ曲」みたいな曲に出会うのがアイマスだと思いますが、本曲はその類の楽曲だと思うんです。

意図してこうなったかは知らないけど、それがただの偶然でも構わない。

「そうなってる」という事実が重要。

美也にとっても、ちょっちょさんにとっても。かなり大切な楽曲になっていくんじゃないでしょうか。

 

Pole star

心の奥で小さな炎がゆらめいて
しまいこんだ希望を照らすんだ
たとえ誰かの一番じゃなくても
輝きたい

眩しい青を忘れない
私の後悔だ
消えなくたって 傷つけられたって
君の瞳を奪うその光が
空に咲くポラリス

きっと道標になる

そして、物語は佳境。
結びのパートを迎える。

「君にとっての何かになれるかな」と願った少女が、「誰かの一番じゃなくても輝きたい」と謳う。

最後に残ったのはエゴ。
我が儘でいいという覚悟の炎。 

もし――

この「君や誰か」が、「自身」のことだとしたら。

この上なく悲壮感の漂う決意に思う。

 

「眩しい青を忘れない 私の後悔だ」

 

指針ポラリスは、この瞬間生まれた。

 

この曲は「自分探しの歌」だ。

眩しい青を前に、憧れ、怯み、悔いて、妬んで、燃やす。

「そんな自分がいたんだ」という気づきの話。

他人を使った自分探し。
目的地を探す旅路の指針。 

その歪さをして「未完成のポラリス」と名付けたんだ。 

 

ポラリスの星言葉の一つに「弱者への理解」ってのがあるんだけど、私は妙に納得した。だから刺さるんだとも思った。

これは、弱者なりの戦い方の唄だ。
後悔に原動力を為す、持たざる者に許された特権の話だ。

そういうダークヒーローみたいな歌なんです、コイツは。

「汚い感情でも前に進めるのなら、結果オーライじゃね?」と許容してるように思う。

 

この主人公はこれからも苦労していくことでしょう。

誰かを妬むと心は荒む。

ちょうどミリシタではヤンデレが猛威を奮っているけれど、彼女らなんてその極致。本人らは幸せそうだけども。

まぁ、この主人公なら大丈夫でしょ。

「消えなくたって 傷つけられたって」

それだけの覚悟は謳ってる。

 

ポラリスとは、指針のこと。
だから、目的地ではない。

2等星に縋るしかない主人公だけど、今はそれでいい。

甘んじて爪を研げばいい。

零しながら前に進めばいい。

まだ駆け出しだった10年前の美也だって、そう歌ってる。

流れていく一筋には宿ってるはずなんだ。

 

溢れる 溢れる 瞳の
シリウスが煌めいて

『瞳の中のシリウス』

 

ベガよりも、スピカよりも、誰よりも。

大きく輝く”極の星”が。

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